[THINK 134]
今回のTHINKでは、国内外で活躍するアーティスト・中北紘子さんをお招きし、広島という場所からインスピレーションを受けた新作による個展とトークイベントを同時開催いたします。
中北さんは兵庫県出身。幼少期よりカサブランカや紫陽花など、四季折々の身近な花をモチーフに描いてきました。自身の感情を言葉で直接伝えるよりも、花々の色やかたちを使って自らの内面と向き合い作品として昇華させるプロセスは、ごく自然な自己表現の方法だったといいます。
学生時代はカトリック系の一貫校で過ごし、中学生の頃から専門学校のデッサンコースに通い始めました。東京藝術大学大学院では油画を専攻し、「作為と無作為の共存」という制作の根源となるテーマにたどり着きます。絵の具の“垂れ”や異なる素材や色彩の重なりを活かし、偶然と意図が交錯する画面は、鑑賞者の内面に共鳴するような深い精神性を湛えています。
描かれるものはシャンデリアや花、光の粒といった、姿形をもちながらも内面から自ら輝く、決して表層的な美しさにとどまらない存在が選ばれています。そこには、言葉にならなかったいつかの感情や記憶のようなものが宿るようです。
大学院修了後は本格的なアーティストの道へ。現在は神戸とカリフォルニアという全く異なる光の注ぐ2拠点にアトリエを構え、多彩な作品の創作に取り組んでいます。2021年には神戸・旧居留地に自身のギャラリーをオープンし、資生堂「THE GINZA」やジュエリーブランドTASAKIとのコラボレーションを通じて銀座・ロンドンで個展を開催するなど、活動の幅を国内外へと広げています。
今回の個展では、中北さんが今回の展示のために描き下ろした最新作までを一挙に展示。色彩の華やかさと静けさが共存する作品群は、普段アートに馴染みのない方にも、自然と心に届くものがあるのではないでしょうか。あわせて展示初日に開催されるトークイベントでは、作家本人に制作にまつわる思いや創作の背景、これまでの歩みについてじっくり語り尽くしていただきます。
「まずは見てみたい」「本人の話を聞いてみたい」──そんな気軽なきっかけで、ぜひ会場で、中北さんの世界にふれてみてください。この機会に多くの皆様のご来場をお待ちしております。
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THINK 134
日時:6月13日(金)
開場 18:30~
開演 19:00~21:00
会場:広島市中区猫屋町8-17 4階
会費:1,000円(予約不要)
FacebookイベントページURL→
https://www.facebook.com/pg/SupposeDesignOffice/events
問合せ:
(電話での問合せ)082-961-3000/SUPPOSE DESIGN OFFICE
(メールでの問合せ)think@suppose.jp
〈必ずお読みください〉
※椅子席は先着100 席まで、以降は立ち見となります。トーク終了後、アフターパーティーとして、ゲストを交えた懇談会の場を用意しております。お気軽にご参加ください。※エレベーターが使用不可のため、階段のみとなります。 ※ご来場が多数の場合は入場をご遠慮頂く可能性がございます。予めご了承下さい。
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Profile
中北 紘子/HIROKO NAKAKITA
アーティスト・ギャラリーオーナー
1981 兵庫県生まれ。2006 東京藝術大学大学院 美術研究科絵画科油画専攻修士課程 修了。
東京藝術大学大学院修士課程修了後、本格的に制作活動を始める。シャンデリアや花といった華やかなモチーフに、多彩な色彩や素材を重ね、幻想的な作品世界を生み出し、「作為」と「無作為」という相反する概念を、大胆な色彩と重層的なマチエールによって描く。神戸と米国カリフォルニアのアトリエを拠点に制作を続け、2021年4 月に神戸旧居留地に自身のギャラリーをオープン。2022 年 資生堂「THE GINZA」とのコラボアートを展開し、2023 年にはジュエリーブランドTASAKI とのコラボレーションにてTASAKI 銀座本店、ロンドンでの個展を実現させた。
instagram:https://www.instagram.com/hirokonakakita
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Exhibition
mizu tekiteki
Concept
今回展示するのは、「命の循環」をテーマに、厳島の植物の緑と、空と海の青に導かれて描いた作品です。日本特有の自然が色濃く残る厳島を訪れたとき、人と動物、そして植物が共生する生態系に「楽園」を感じました。この島全体に溢れる、生命の美しさに心を打たれたことから、作品の制作が始まりました。
きものに紋様を染めるために使われる伊勢形紙(いせかたがみ)を用いて、紅葉の形を取り入れ、花の中心部に見られる神秘的な星形を縫い上げたりすることで、日本文化が古来より大切にしてきた自然との共生を表現しています。
木々の葉を描いた作品《mizu tekiteki》は、象徴として紅葉を全面に施し、現代と、かつてあった「神代」を結ぶイメージがベースとなっています。空と雲、海の作品《kumo yuyu》では、水の循環を通して、命の循環を表そうと試みました。雲から雨へ、雨から川へ、川から再び海へと、常に循環を繰り返し、地球全体を潤す水の世界を描きました。
小鳥が囀り、鹿が寛ぎ、静かな風が吹く、この穏やかな神様の楽園を、永遠に。そのような願いを込めて描いた作品です。
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日時:6月13日(金)〜20(金)
営業時間:11:30~19:00
会場:広島市中区猫屋町8-17 2階
定休日:水曜
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中北紘子
制作全体
儚さのなかに確固とした強さを持つものに惹かれ、これまで、花、柳、人魚姫、シャンデリアなどを描いてきました。
桜の花は春のたびに咲いては散ることを繰り返しますが、そうして桜の命は未来へと続いていきます。人や生き物が時とともに老い、次の世代へと命を受け渡し、それによって生命が循環する。そんな儚いと同時に、しなやかで力強い世界を、絵画を通して表現したいと考えています。
日本人は古くから季節の変化を身近に感じ、日常に取り入れながら暮らしてきました。鳥の声、植物のざわめき、川のせせらぎといった、すぐさま失われてしまう細やかなものに気づき、その一瞬のきらめきを描くことで、本当の強さを宿した作品が生まれると私は信じています。
私の作品における絵の具の垂れは、重力という自然の力に従って絵の具が動いたありのままの痕跡です。風にしなやかに揺れながら、力強く垂れる柳のように、私たちを大らかに見守り、慈しむような、そのような作品を描きたいと考えています。